さて、今回の「ええモンありまっせ、お客さん」はちょっと方向が違います。オススメも確かにあるのですが、その十倍以上のオススメできない部分があります。題して「大長編漫画ワースト5」。では後ろ向きにゴー。

まず、いきなり1位からいきましょう。栄えあるワースト1は

 タイトル:美味しんぼ

 作  者:花咲とおる(原作:雁屋哲)

 掲載誌 :週刊ビックコミックスピリッツ

 単行本 :80巻(継続中)

オススメ部分:単行本1巻から5巻

オススメできない部分:オススメ部分以外全部

まず、オススメ部分の話を。美味しんぼの連載開始は1985年。すでに週刊化していたスピリッツで月1回連載として始まり、開始当初から漫画ファンの間ではかなり評判となりました。

その理由を自分なりに分析しますと、従来の料理を題材にした漫画が、主人公の料理がうまい理由を作り手である主人公の天才的ひらめきに拠るものとするのがほとんどだったのに対し、本作は「料理とは素材だ」というコンセプトを持ち込んだことにあると思います。まあ、後にそれを否定するような話も何話かありますが、話の基本的なパターンは優れた素材を探すことですからこう言いきっていいと思います。

それともうひとつは「究極のメニュー」の存在です。大体、料理に限らず人の主観によって評価が左右する、いわばアナログな題材の漫画というのは、主人公がより高みを目指すというシーンで完結するのが普通だったのです。何しろ、満点とか正解とかがないのですから。ところが、究極のメニューを作るとなれば、ある程度読者にも納得がいく「形」を示さなくてはなりません。これは大変ではありますが、ストーリーの引きにもなります。

 この2点により、本作は明確なパターンが作りやすく、かつ従来の料理漫画との差別化が図れたわけです。

 この時期の本作は一般人には知る由もなかった高級食材や、高級でなくとも新鮮だと素晴らしく美味いものなど、題材の選び方もうまく、月1回連載なため他の週刊連載よりも頁が多く、1話完結の読みごたえ、情報量の豊富さなど、本当にオススメです。

では、続いてそんなに面白かった本作がなぜオススメできなくなったかについてお話しましょう

 まず第一に皮肉にも本作の人気が上がり、毎週連載になったことがあげられます。毎週連載ともなれば、これまでのように惜しげもなくネタをつぎ込み1話完結という訳にはいかなくなり、連続ストーリーものとして次回まで引っ張ることが余儀なくされました。しかし、これはいわば水増しですし、少年漫画の様に対決しているわけではではないので次週がさほど気になるわけでもありません。そして、この点については原作者も気になっていたらしく、打開案を出しますが、それがさらにオススメできない理由になっていくのです。

 その打開案とは「至高のメニュー」の登場です。一応説明しますと、至高のメニューとは主人公の山岡の父親である海原雄山が究極のメニューに対抗する形で新聞社に依頼され始めた企画で、毎週究極メニューとして山岡が用意した料理と至高のメニューとして海原雄山が用意した料理の対決を行うという設定でした。これにより一気に対決モノとなった本作ですが、自分はこの対決の方法も非常に疑問でした。たとえば、究極の餃子対至高の餃子とか究極のカレー対至高のカレーという勝負をしているのですが、果たして、究極の餃子とは究極の小麦粉料理なんでしょうか?究極のビーフカレーとは究極の肉料理なんでしょうか?違いますね。    

つまり、究極の○○=究極のメニューの1品ではないのです。この方式で行くとこの世に存在する全ての食材、全ての料理法に究極の○○があることになってしまいます。これは事実上の初期設定の放棄です。この時点で自分は単行本の購入を止めました。

 次に原作者雁屋哲が妙に社会派を気取りだしたのもオススメできない大きな理由です。また、その論理が「小学生にもわかるように」指示でもされたのかと思えるほど、チャイルディッシュというか説得力がなくて読んでいてヘナヘナです。食い物を絡めるから尚更なんでしょう。長良川河口堰の話を始めた時点で自分は単行本6巻以降を売りました。

 それでもスピリッツを毎週買っていたため目だけは通していました。そして、それから約10年間、だらだらだらだら続けていた連載も、山岡と栗田さんの結婚、そしてその披露宴の席で究極のメニュー披露という展開になり、「ついに終わりにする気になったか」と期待しましたが、その期待は最悪の形で裏切られました。究極のメニューを出し終えた山岡がこれで究極のメニュー作りも終了と言おうとしたところ、審査員たちが「これで究極だなどと思ってもらっては困る」と言い出すのです。「世界にはまだまだいろんな料理がある」と。確かにそのとおりです。でも、それを作者自らが言いますか?こういうセリフは終了を惜しむ読者が言うものでしょう。で、結局山岡は「これからも精進いたします」とか言って連載は続行、現在にいたるわけです。

 しかし、それにしても特に最近の、世界味めぐりと称して沖縄とか山梨とかイタリアとか思いついたところに脈絡もなく出かけ、その土地の名産、特産、知られざる一品を紹介するという展開、テレビで見た覚えがありませんか?一度行くとしばらくその土地のものが続く点とか、紹介する人がいつも一緒な点とか。そう、食いしん坊万歳です。もう、落ちるところまで落ちたという感じですが、とどめにもう一つ、最近の雁屋哲がいかに手を抜いているかをお教えしましょう。この世界味めぐり、始まったころは何週かその土地の名産および料理を紹介し、いざ、究極のメニュー発表というときにはオリジナルの料理を出していたのです。ところが最近では紹介した料理をそのまま究極のメニューだといって出しています。また、これは始めて見る料理だと思っても「ここでこの料理の創作者であり地元の〜」とか言ってその料理の創作者を紹介するのです。つまり、究極のメニューすら自分で考えていないわけです。もう目に浮かぶようですね、漫画の中の山岡さながらの豪遊をして、この料理はうまいから漫画の中で紹介しましょうとか言っている原作者の姿が。

 と、言う訳で、早く終わってほしいどころか既に終わる時期すら逸しているこの作品、堂々ぶっちぎりのワースト1です。

もうワースト1だけでおなかいっぱいといった感じですが、めげずに参りましょう。ワースト2はこれです。

 

タイトル:あぶさん

 作  者:水島新司

 掲載誌 :ビックコミックオリジナル

 単行本 :78巻(継続中)

オススメ部分:単行本1巻から47巻

オススメできない部分:48巻以降

最初に50代、60台に方にお聞きしたいのですが(いるのか)、漫画の中で50台の主人公が若い連中に混じって活躍しているのを見て、爽快だと思ったり、発奮材料になったりするんですかね?

かつて水島新司の作品「野球狂の詩」の中で岩田鉄五郎が「やれやれ、とうとう(老眼で)サインが見えん様になってしもた」とか言っていたのが岩田鉄五郎50歳のときです。ところが、あぶさんこと景浦安武は現在54歳、それで福岡ダイエーホークスの4番を張り、いまだに打撃三部門の上位に顔を出しています。これどう思いますか?ちなみに日本のプロ野球の至上最年長の選手の記録は48歳だそうです。しかも、戦後まもなくにファンサービスとして消化試合に監督が登板した(ピッチャーだったんです)というもの。メジャーリーグでも、あの伝説のサチョル・ペイジが2イニング登板したのが54歳(一説には52歳)です。フル出場となると記録はぐっと下がります(45歳)。ましてや、1年間のフル出場となるとおそらく30代後半でしょう(はっきりしたデータが無くてすいません)。漫画だからと割り切るにしても程ってもんがあると思うんですがねえ。

この作品は、自分的には過去に3回終わる時期を逸しています。

1度目は南海ホークスが身売りして、福岡ダイエーホークスになったとき。漫画の中でも結構悩んでいましたが、他球団に行くにしろ、ホークスに残るにしろここで終ったらいい終わり方だったと思います。

2度目は4番ライトでフル出場し、3冠王を取ったとき。「1打席にかける代打屋」という初期設定が終った瞬間ですから。ちょうどこの頃、自分の娘とも言うべきカコちゃんが結婚していますから、それと絡めて「最高のプレゼントやわ」とか言わせれば大団円だったんですが。

そして3度目は、もう自分は絶対ここで終ると思っていたし、終るべきでした。息子である景浦景虎とプロで対戦したときです。

 

メジャーリーグにも記録の無い現役での親子対決。これをやってまだ何か漫画として、作品として描き残したことってありますか。

オススメの47巻というのは南海ホークス身売りの部分までです。ここまでは本当に好きなんですよ。この作品に出会うまで、プロ野球漫画というのは、「アストロ球団」、「男どアホウ甲子園」ぐらいしかなく、グランドの中のことがメインで、実在の選手のプライベートなどほとんど描かれませんでした。それがこの作品では主人公のあぶさんを含め、みんな試合が終れば一杯やって酔っ払ってるんです。そこになんとなく大人の世界を垣間見え、さらに豪快奔放で良かったんです。しかし今では毎年毎年同じことを繰り返している単なる歳時記のような存在でしかありません。現実の時間の流れに合わせて登場人物が歳を取る以上、この作品もいつかは終るでしょう(まさか、60,70歳になってまで現役でやらせる気は無いでしょうから)。それならばまだ、区切りがいいところで終っておくべきだったと思いますがねえ。

さて、次です。

タイトル:はじめの一歩

 作  者:森川ジョージ

 掲載誌 :週刊少年マガジン

 単行本 :57巻(継続中)

オススメ部分:ストーリーが進んでいるとき

オススメできない部分:それ以外

 この作品を含め、残り三作品はあまりムキになって責める気にはなりません。なぜなら、継続しているのは作者の意思というよりも編集部の意思だというのが見えるからです。

 この作品、編集部の方針で引き伸ばしている割には無理がありません。それはどういうことか説明しましょう。

引き伸ばしといえば、大概メインストーリーそのものを伸ばすのが普通です。しかし、「これをやったら終わり」という目標がある場合冗長になりがちです。対して、本作では細かいエピソードを多数加えているのです。具体的にいうと青木や木村、板垣のエピソードなどですね。これらははっきり言ってしまうと余分です。メインストーリーには関係ないといってもいいでしょう。しかし、本作では2,3ヶ月かけてこれらのエピソードをやることは珍しくありません。そうすると一歩はその間何もしていないに等しいのでメインストーリーは進みませんが、画面上の変化だけはあり、漫画としてのテンポは落ちないので週刊誌で読む分には面白く感じる訳です(従来ではこういう話は増刊号か何かで外伝として描かれるのが普通でした)。だから、本作のコミックスはものすごくトビトビに買ってもストーリーがわかります。

ついでに言うと、1歩の戦績ってちょっと異常です。同じ作品なのに、鷹村が十数戦でもう世界チャンピオンになっているのに(現実でも辰吉城一郎など十戦弱で世界チャンプになってます)、一歩は20戦以上して1敗しかしていないにもかかわらずまだ日本チャンピオン止まりですから。ま、これは鴨川会長のマッチメイクが下手なんでしょう、たぶん。

やたらと巻数が出ている割に話が進まず、かといってテンポが悪いわけではないのですらすら読める本作、マンガ喫茶で時間をつぶすときにいいマンガナンバーワンの称号をさし上げましょう。

最後にちょっと予言を。「宮田との東洋太平洋タイトルマッチで、この作品は完結するであろう。そして新たに一歩が本気で世界チャンプを目指す『はじめの一歩 飛翔編』が始まり、コミックスは1巻から出し直しであろう。」お後がよろしいようで。

では、次です。

タイトル:ドカベン プロ野球編

 作  者:水島新司

 掲載誌 :週刊少年チャンピオン

 単行本 :37巻(継続中)

オススメ部分:単行本1巻から6巻

オススメできない部分:好みによる

 オススメ部分は最初の1年目、山田たちのルーキーイヤーです。山田(西武)対岩鬼(ダイエー)、殿馬(オリックス)、里中(ロッテ)、土井垣(日ハム)というプロ野球編ならではの対戦やオールスターでの高校時代のライバルとの再戦(オールスターまでわざと誰がどの球団に入団したか教えない演出が良し)、また、高校時代1度しか見れなかった、山田や岩鬼の負けるシーンが新鮮です。

 しかし、これが2年目以降になると毎年ほぼ同じことの繰り返しになってしまい、さらには、決め事があるための構造的な欠陥が出てきます。その決め事とは「毎年のペナントおよび日本シリーズの優勝チームは事実に基づく」ということと「その年のペナントの話は翌年まで持ち越さない」ということです。

 まず、前者の何が欠点かというと「ペナント終盤に下位チームにスポットが当てずらい」、「優勝チームが決定するまで漫画にできない」、「漫画になったときにはどのチームが勝つのか読者にはわかってしまっている」ということです。そして後者の欠点は「1試合をじっくり描くことができない」ということです。なにしろ「ドカベン」では1試合に何週間、何ヶ月、1大会に何年もかけるなんてザラであり、その緊迫した展開がウリだった訳ですが、今回はストーブリーグには自主トレ、ドラフト、オープン戦のことも描くので賞味10ヶ月ほどでペナントレース6か月分を消化しなくてはなりません。必然的に駆け足になるか年間数試合分程度しか描かないかのどちらかになります。さらに言うと、開幕直後に描いた試合がペナントが終ってみたら重要でもなんでもない試合だったということもたびたび見られるようになったのです。

このような欠点がある上に、最近ではマンネリ打開のためオリジナルキャラを出すようになったわけですが、これがまた輪をかけてつまらない。大体、仮にもプロ野球の監督が自分の球団がドラフトで指名した選手を知らなかったり、ぜんぜん打撃練習をしない選手やブルペンでろくな球を投げない投手を公式戦で使うと思いますか?失礼ですよ。少なくても自分だったらこんな風に描かれたら、抗議しますね。もっと考えて采配していると。

 それと、中西球道の登場で、実は本作が「ドカベン プロ野球編」ではなく「大甲子園 プロ野球編」であることがはっきりしたわけですが、そうするといくつか疑問が湧いてきます。中西球道の父親の中西大介はどうしたのかとか(仮に引退しているとしても所属していた日ハムに球道帰国のことを伝えないのはちょっと不自然)博多イーグルスはどうなったのかとか、球道高校卒業の年にいくらなんでも1球団にも指名されないのはおかしいとか、真田一球が指名されないのも変だとか(山田のライバルたちは甲子園に出てないやつまで指名されているのに、しかも外れとはいえ1位で)、ヤクルトのテストを受けるといっていたダントツ三郎丸三郎はどうなったのかとか(結果ぐらい教えてくれてもいいと思うが)もうきりがないです。そもそも大甲子園自体が無理がある設定だったのでしょうがないのですが。

 またまた文句だらけになってしまいましたが、それでもこの作品まだまだ演出次第で面白くなるとは思うのです。たとえば、試合の場面はもっと短くしてその分量を増やす。その増やす分は西武、ダイエーに固執せず、日ハム、ロッテ、オリックス、近鉄およびセ・リーグの試合を増やす。それもスポーツニュースのようにハイライトで。何の事はない、これは本作でオープン戦のときにやっている手法なんですが、これをペナント中もやってほしい。次に、変なオリジナルキャラを出すぐらいなら、明訓の先輩の山岡や後輩の渚、東郷学園の小林や、甲府学院の賀間、いわき東の緒方など、大学に進学した、もしくはしたと思われる、あるいはノンプロに行ったと思われる選手たちを再登場させたらどうでしょう。この方が絶対盛り上がるし、今からでも一球や三郎丸も出せるでしょう。それとトレード。もうプロ7年目ですからトレードされるやつがいてもおかしくないと思います。セ・リーグのライバルたちをパに持ってきてもいいし、コンバートなんかもいいでしょう。

 最後にオススメできない部分を「好みによる」とした理由ですが好きなキャラがクローズアップされたときに限りときたま面白くなるからです。で、それってほとんど山田が出てないときなんですよね。

さて、最後はこれです。

タイトル:こちら葛飾区亀有公園前派出所

 作  者:秋本治

 掲載誌 :週刊少年ジャンプ

 単行本 :127巻(継続中)

オススメ部分:好みによる

オススメできない部分:好みによる

 この作品に関してはもはや連載を続けること自体が存在意義になっていますから、終わる時期がどうのこうのいうのは止めましょう。では、何を言うかというと内容の変貌の話。

 本作の一大転機というと、やはりアニメ化というのが一般的ですが、自分の考えはちょっと違います。実際にはアニメ化の少し前、ジャンプが売上1位の座をマガジンに明け渡した頃です。

 そもそも、本作のスタンスというのは、「アニメ化され、油が載っている作品に続く、人気で言えば5,6位くらいの、めちゃくちゃ面白いわけではないがコンスタントに面白い作品」というのが基本でした。ところが、あの時期、ジャンプは過去無かったほどの危機に追い込まれていました。一枚看板ではないが最大の看板であったドラゴンボールの終了、それに続いて、アニメ化されまだまだ続けようと思えば続けられる、幽・遊・白書、スラムダンクの作者からの申し入れによる終了。そして新人はこれといって育たず、ベテランは他誌、またはライバル誌に移籍。このような状況で嫌も応も無く看板作品に成らざるをえなかったというのが転機だったのではないでしょうか。野球に例えるならクリーンナップが全員引退、トレード、FA等でいなくなってしまい、昨シーズンまで7番を打っていた打者が4番を任されるようなもんです(そして、マスコミが新4番を持ち上げるスポーツニュースの特集がアニメ化)。

看板となればこれまでのように好き勝手やるわけにはいかず、マンガ界の流行を取り入れるようになります。具体的に言うと女性キャラが急に増えたのがこの時期です。

で、結論を言うとこの転換は成功したのでしょう。ワンピースやハンター×ハンター、遊戯王、ヒカルの碁といった作品が出てきても元に戻さないのですからメインターゲットである小、中学生にはうけているのでしょう。しかし、理屈では成功だとわかっていても、どうしても感情的に納得がいきません。やっぱり、昔のマニアックな話のほうが好きなんですよ。ですが、完全に元に戻せとは言いません(もう無理でしょうし)。せめて、1年に1本くらいこの前の「101匹怪獣大行進」のような話をやってください。

と、いうところで「大長編ワースト5」終了です。終らないがゆえに変貌していった作品たち、これらがまた輝きを取り戻す日はくるのでしょうか?自分は皮肉でもなんでもなくその日がくるのを心待ちにしています。だって、どれも一時期は大好きだった作品なんですから。

 

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