タイトル:山猫山だより
出版元:少年画報社 YKコミックス
著 者:ひのもとはじめ
ひのもとはじめといっても知っている人はほとんどいないでしょう(失礼ながら)。
自分は世界でも稀な「ひのもとはじめ」マニアであり、過去出版されたコミックスは全て持っています。
以下略歴
1986年週刊少年チャンピオンでショートギャグ「すうぱあチャンポン」を連載。
ただし、コミックスは1巻のみで絶版。最終回は収録されていません。
その後4コマ漫画に転身し、双葉社、ぶんか社等の4コマ誌で作品を発表。
双葉社からは「XUXUゲーム」、ぶんか社からは「こんなに神経ショー」、「ねくらのみかん」を発行。
以降あまり紙面で見かけなくなるが、平成18年12月のコミックス発売予定表に突然「山猫山だより」が
発売予定と掲載される。
ここからは私的な感想。上記のコミックス発売予定表を見たとき正直驚きました。
「まだ漫画家やっていたんだ」と。またまた失礼な言い草ですが、竹書房、ぶんか社、芳文社、双葉社の
ほとんどの4コマ誌をチェックしている自分がここ数年見ていなかったのですから
「掲載誌はいったいどこ?いつ連載してたの?」てなもんです。
ましてやこの出版不況の御時勢、4コマ漫画のコミックスなんて雑誌の看板背負ってる数名ぐらいしか出やしません。
そういった意味でも二重の驚きとともに「よかったなあ」と素直に喜びました。
ところが12月某日、まんがの森上野店で平積みになった本書を見て愕然としました。
その帯には「ひのもとはじめ遺稿集」の文字が…。
とりあえず買って帰り、まず後書きから読み始めるとそこには奥様の手による彼の闘病生活が書かれていました。
大量の猫を飼っても苦情が出ない家を探すうちにたどり着いた田舎での暮らし。
二度の大病からの生還。しかし、末期癌であることが告示され、自宅での療養生活。
晩年は絵だけではなく立体物による猫作家として個展も開いていたことなど。
自分が知らないうちにこんなことになっていたのかと、まるで同級生の卒業後の経緯を聞いているような気分になりました。
本書は後書きに書かれている事柄のうち、田舎の一軒家に引っ越してから大動脈瘤からの生還と
その前後までがエッセイ風に描かれています。
特に動脈瘤の手術の下りは「終わってしまえば笑い話」という感じで描かれているだけに
その後の彼のことを思うと複雑な心境になってしまいます。
ですが、「ひのもとはじめ」を知らない方にとっては問題なく楽しめることは間違いありません。
4コマ漫画時代はかなり癖のある作風で(それ故に自分はファンになったのですが)、
あまり一般受けするとは言いがたかった著者の漫画ですが、皮肉にも遺作集である本書は
誰にでも楽しめるエッセイ漫画となっています
(自分の病状を冷静に客観視している点は05年のベストセラー、吾妻ひでおの「失踪日記」を髣髴させます)。
そしてこれまた皮肉なのですが、彼が早世しなければおそらくこの漫画はコミックスとして世に出ることはなったでしょう
(奥付によると掲載誌はヤングキング、掲載時期は97年頃だそうです)。
あらためてひのもとはじめ氏の御冥福をお祈りするとともにこの名作が少しでも
人々の目に留まりますようこの文章を書かれていただきました。
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