「そういや、料理マンガ総ざらいで、入れ忘れてたマンガがあったわ。
かったりぃーから、オマエ、コレ読んでなんか書いとけや、じゃ!」
と愚兄に言われ、一冊の文庫本を手渡された。


「孤独のグルメ」(作者:谷口ジロー 原作:久住昌之)


谷口ジローといえば、餓狼伝のコミカライズを最初に手掛けたにもかかわらず、いまや板垣恵介に
すっかりお株を奪われ、噛ませ犬と堕してしまった可哀相な漫画家さんか・・・。
(谷口ジローファンの皆さん、モノヲナゲナイデクダサイ。)


どれどれ、読んでみるか。
??・・・。
漫画のノリがつかめない。
主人公が通りすがりの食堂で飯を食うという、ただそれだけのお話が続く、さりとて安くてうまい、
いわゆる”当たりの店”を紹介するお話でもない。
主人公が初めて入る店で、注文の仕方を間違えたり、頼んだ物の量が多すぎて後悔したり、
と、非常によくありがちな卑近な心理を描いている。
なんなんだろう、コレは?
だけど、読み進めていくうちに、このマンガが言わんとしている哲学が伝わってきて
だんだんとクセになってきたりして。
なんだかオモシロイですネ、コレ。


この作品を料理マンガ総ざらいに入れなかったのは別に間違ってなかったよ。
だって、これは”料理マンガ”じゃないもん。
グルメマンガとも、ちと違う。
文庫の帯に書いてあった”アンチ食通”なんて文句は、もうまるっきりぜんぜん完璧に違う。
もっとも、カテゴリなんてどうでもいいか。
つい、何度も読んでしまうような、しみじみとした面白さを持ってるなあ。


この作品には、実在すると思われるお店がモデルとして出てくるので、その気になれば、
実際のお店まで食べに行くことも可能だろう。
でもねえ、孤独のグルメとは、仕事なんかで外出して一人で昼食をとらなきゃいけないようなそんな時、
商店街をうろついて良さそうな店に入るちょっとした愉しみというか、束の間、自由になれるような
そんなような気分の良さなんだな。
だから、モデルの店を探し出してわざわざ食べに行ったら、それはもう、孤独のグルメの哲学に反するのだな。
通常のグルメマンガだったらそれをやっても良いけど、孤独のグルメでそれを実行するのは、
愚かさの極みというべきだな。


「孤独のグルメ」第3話「東京都台東区浅草の豆かん」に登場したお店
甘味屋 「梅むら」 (作品中では”松むら”となっていた)


愚かさ極まる男が一人、ここに佇む。


人間の犯す愚行に限りはない。限りなき愚行の果てに人類は何を見る。
未だ見ることのない我々は幸せなのかも知れぬ。・・なに言ってんだか。
いやさ、違うのだ。
そう、何気に散歩してたら、甘味屋さんがあって、たまたまこの店に入ろうと
しているだけなんだな、ボクは。
そして別の店でロースカツ定食を食って腹ごしらえしてきたのも、決して主人公と同じ轍を踏まない
ように、としたことではないのだ。
※本作の主人公は、この店で食事も一緒にとろうと考えたが甘い物しかメニューになく、しかたなしに豆かんだけを食べた。


この店は営業時間が短く、午後1時から5時までしかやっていない。
しかも日曜祭日はお休みときている。いい商売だなー。
1時ちょい前に着いたんだけど、何人か客が並んでいた。

やがて店が開くと、ほとんどの客が、豆かんを注文していた。
おみやげとして持ち帰る客も多かったが、やはり皆、豆かんを頼んでいる。
有名なんだな、きっと。
当然、ボクも豆かんを注文する。
やがて、店のオバチャンがお水を運んできた。
水!?
お茶じゃないの。
有料なのかな。でも、メニューにもお茶はのっていない。
もしかして、頼めば持ってきてくれるのだろうか?
他の客はお茶がないことを特に気にしてないようだ。
いくら夏場とはいえ、甘味屋でお茶を出さないなんて・・・。
やがて、カウンターの向こうでは、店主が無造作に小鉢へ寒天を放りはじめた。
そして、張りがよくて実に綺麗な豆を寒天の上にのっけている。
これに、上から蜜を加えれば出来あがりか。
期待できそうだ。これでお茶があれば言うことないんだけど・・・。
ボクは恨めしくちびちびと水を舐めていた。

やがてボクの目の前に豆かんが運ばれた。
蜜で味付けされた豆と寒天だけのシンプル極まりない和菓子だ。
小鉢の大きさは、本作にあった解説通り、確かに大き過ぎず小さ過ぎない程好い量に収まっている。
味はと言うと、見かけもシンプルだが味はもっとシンプルだった。
豆の味が豆そのものだ。
豆の味に塩ッ気があるだけで甘味をまるで加えていない。
甘味は上からかけた蜜だけ!?
「まあッ!ストレートに伝わる豆の味と黒蜜の玄妙な甘味との出会いが、まるで仲むつまじい夫婦のようで
ぷりぷりと弾力のある寒天がシャッキリポンと舌の上で踊るわ!」
(栗田さん的表現)

うむ。
豆かんなる菓子は直球で、けっこう男らしい菓子だ。気に入った。

「そう、材料は豆と寒天だけです。その上に蜜を加えました。」

なんか初期美味しんぼで、山岡がしたり顔して、こんなようなセリフで紹介しそうな料理だネエ。
こりゃ、マジでええわ。
今度、婆ちゃんに買って帰ろ。
ハ〜、余は満足じゃ。
ま、しかし孤独のグルメでの、この回の主人公はけっこうアホだね。
豆かんの事で頭が一杯になってて、この店にご飯物がない事態を予測できなかったんだからなあ。
その点、ボクはちゃんと別の店でロースカツ定食をおかわりしてまで食って、存分に腹ごしらえして来たから
準備万端よ。
ま、ちと食いすぎた気はするがのう。
うわーっはっはっは。
あれだな。物事ってのは、こう・・、広く多角的に見んとなあ。
オレ様のようにな、ほっほっほ。
うん、豆かんはうまかったぞ。
どれ、腹ごなしに、ちょいとこの辺りを散策するかの。
なんだ、すぐ隣にうまそうな手打ちのスパゲティやピザを食わせる店があるじゃないか。
ちょっと歩けば、鰻やうどんなんかもあるし
ホントにこの主人公はダメのダメダメだなあ。
ああ、すぐそこににも、よさげな洋食屋がある・・・。アレ?



洋食屋「佐久良」 (作品中では”佐久間”)



ギャーッ!!!

ここは本編の最後に出てきたハヤシライスだのビーフシチューだのがメニューにある、スゲエよさげな
洋食屋じゃーん!
トンカツじゃなくて、ここで腹ごしらえすれば良かったんじゃよー!(何故かファーザー口調。)
ワシは豆かんのことで、頭が一杯になってて、この洋食屋のことまで考えがおよばなかったんじゃよー!

馬鹿、馬鹿、馬鹿、ワシの馬鹿ー!!
(声:緒方賢一)

クソッ、腹いせに食ってやろうかと考えたが、胃袋のヤツがもう・・、クッ!
お父様、お母様、先立つ不幸をお許し下さい。
私は昼食でハヤシライスを食するべきところをトンカツにて済ましてしまいました。
このような愚挙を犯してまで、おめおめと生きていくのは日本男児として死以上の屈辱なのであります。
つきましては、ちょもすけは割腹して果てる所存です。
ガクッ!

教訓:物事は広くとらえるベシ

管理人死亡。これまで、当サイトを応援していただきありがとうございました。
復活した暁には、あらためて当サイトのご愛顧の程をお願い申し上げます。
生き返るのは、え〜と・・、5秒後くらいです。


おまけ:
「孤独のグルメ」には他に、「肉の万世」の名物メニューとして有名なカツサンドが登場します。
サイトを漁っていたら、万世とカツサンドに関するとても面白いコラムを見つけました。
http://akiba.ascii24.com/akiba/column/yabe/2001/01/28/622447-000.html
この作品と全然関係ないけど、秋葉原名物オデン缶に関するコラムも熱くてグーッですよ。



さらに愚行は続く→

戻る


[PR]女性が輝く公文の先生募集中!:全国で教室開設説明会開催