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少量の化学調味料をふりかけたステーキを喰らう
「おなかはすいた?」 (講談社全7巻 作者:東城三紀夫)より




うぬう・・。
(さいきん、ガッシュ好きなんで許してくれ。)この「おなかはすいた?」、ちう作品は傑作なのだ。大好きなのだ。
この作品は料理ってモンは、お客様からお金をもらってご提供するもの、っていうお店として当り前のことを真に据えている。
そのうえで、中華の奥深さと料理のおもしろさを感じさせてくれて、それでそれで、作者は非常によく調べてあって、中華に関する食材や調理法のみならず、中国人の料理観みたいなものまで伝わってきて、そのへんもすごく興味深いのですよ。
さらには、経営という現実的かつ地味な観念を根っこに持ちつつ、料理勝負というダイナミックな展開を繰り広げてくれるところが、またたまらん。っていうかー、っていうかー販売価格と店の好し悪しの判断はわかつことができないものだってことが自然にわかるから逆に燃えるのだ。
少年マンガのような熱気と、身近な異文化を感じさせてくれるおもしろさ。このへんが大好きだ。
もっというと、とても誠実であたたかみがあって、週刊少年誌でまれに見られる、ある種の傑作のような勢いある展開と躍動感があるんだ。
正直いって、この作者は世間でいうところの、上手な人じゃない。
だけど、この作品を、そうした部分でぜひとも敬遠しないでほしい。
なぜなら、絵や手法が整理されて完成されてからでは、このおもしろさは絶対にでないものだから。
ようするに、「おなかはすいた?」という作品は、マンガの傑作にときたま見受けられる、
”一人の作家が連載中に急激に成長していってる作品”なんだ。
パッと見の完成度が低く思えても、読みすすめるうちに熱気が伝わり、とまらなくなる。
「おなかはすいた?」ってのはそういう作品で、そして本当におもしろいマンガってのはそういうものなんだ。
だから、なあ・・・
「しじみチャーハンは、どうみても採算割れだろ?」とか、
「麒麟の張は身長2m50はあるよな。」、とか
「親父が生きて出てきた時は笑った。」
、とか、
「キャロウェイの顔のでかさは何かの病気か?」
、とか、
そんなこと言うな!(注:誰も言ってません。)

「おなかはすいた?」は、ミスターマガジンという、ややマイナーで社会人向けの雑誌に掲載していたため、あまり知る人がいなくてとても残念だけど、わが
妄想美食倶楽部の推薦図書です。
みんなも、ぜひ買って読んでね。
ほんとにおもろいですよ。


さて本題。みなさんは、「うま味の相乗効果」というのを、ご存知でしょうか。
異なる2種のうま味成分をあわせることで、それぞれが単独で持つうま味よりも、5倍・10倍のうま味にはね上がるという効果です。
「おなかはすいた?」で、さかんにつかわれる表現の一つです。
最近の料理マンガでは、すっかりお馴染みになった言葉で、マンガで料理のスゴさを表すのに、もはや欠かせない表現となってます。
このマンガ表現における、「うま味の相乗効果」、というこの言葉。
「おなかはすいた?」は、この表現を料理マンガの世界において先駆けて行ったわけじゃないけど、ボクが知る限りで、もっとも効果的に用いて料理に強い説得力を与えた料理マンガだと思う。

このたびは、「味の相乗効果」表現の象徴ともいえる、
「少量の化学調味料をふりかけたステーキ」
を喰らい、その効果を検証してみます。

さて、味の相乗効果について、もう少し説明しましょう。
そもそも、
うま味とはアミノ酸の味、だそうです。
その主要なうま味成分が
グルタミン酸とイノシン酸で、昆布に代表される植物系のダシにはグルタミン酸が多く、かつおぶしに代表される肉や魚のダシにはイノシン酸が多くふくまれるといいます。
それで、このグルタミン酸とイノシン酸はなんとなんと、一緒にあわせることで、それぞれ単独に味わうよりも、
5倍から10倍ものうま味を感じるんだそうです。
このあたりまでの説明は山岡が100回くらいは説明してるので、みなさんもご存知と思います。
「おなかはすいた?」では、ステーキの表現に、この効果を利用しました。
それは、次のような理屈です。
肉にはイノシン酸が多く含まれる。だから、グルタミン酸をくわえることで、より、うま味がひきたつ。
しかし、昆布からとったダシを使うと、昆布の匂いが邪魔をしてしまう。
では、匂いが邪魔しない純粋なうま味成分である化学調味料を用いよう。
むろん、化学調味料とて使いすぎるとバランスを壊す。
だから、ほんの少量だけふりかける。
スイカや、おしるこに塩をくわえることで甘味がひきたつように、ステーキにも、ほんの少量だけ化学調味料をくわえることで、肉のうま味がひきたつ。


うぬう・・、文句のつけようがないほど理にかなっている。理屈の上では完璧です。
では、実際にステーキを焼いてみよう。


今回の主役、ご存知、「味の素」


めずらしく伝助じいさん並にうまく焼けたゾ。


まずは、なにもつけずに食べる。
もぐもぐ。うん、ウマイ。


続いて味の素を少しだけ。ぱらっと。
もぐもぐ。・・・ん!?
・・・わからん。


じゃあ、もうちょっとかけるか。ぱらぱら・・。
ん〜〜?やっぱりわからん・・。


えーい、これでどうじゃあ〜い!!

味の素、やま盛りの肉

うーむ、味蕾が馬鹿になりそうなだな。
なに!味蕾!?みらい・・。

「ミ、ミライ・・ボクだよ、カムランだよ。会いたかったよ。・・ミ、ミライ・・・。」 

ボカッ!
(ときどき自分で殴って直す。)

現実逃避、終了。

さて、いくか。
もぐもぐ・・・ム!?こ、これは。


「・・か、化学調味料の・・・味が、します。」


当り前だ、バカ!!



あ〜、なんかうまく行かなかったなあ・・。

今回のテーマと全然関係ないけど、実は今日のステーキでは、テレビの特命リサーチでやってた、
「マイタケの煮汁をつけたステーキ」も同時に実験してたりして。
見た目じゃわかんないけど、写真の向かって左の肉がマイタケステーキです。
こっちのほうは、肉のボソボソ感がネッチョリ感にかわり、肉のうま味も増して、おいしくなったような気がした。なんとなくだけど。
今回の化学調味料ステーキは、味彦のような鋭敏な味覚の持ち主だけが感じ取れるワザということで、良しとしようか。

後日談:
なんとなく釈然としなかったボクは、翌日、再チャレンジしたりして、今度は肉に化学調味料をふりかけてから焼いたりして(実はマンガでは最初からこうしている。)
したら、ちゃんと味の違いがわかったりして。でも、それで感じたことは、「うぬう、外食した時に感じる肉の味だ。」だったりして。シンプルな塩だけの味付けの方が家で食うには落ち着けるっていう結論は、”少量だけふりかける”っていうこのマンガで提言した方法論と、ぴったり合ったともいえたりして、この結論は食の世界の奥深さをさらに感じさせてもくれたりして。





さて、「おなかはすいた?」では、料理マンガにおける化学調味料の位置付けに一石を投じました。
これは実は料理マンガにおいて、画期的なことなんです。
これまでの料理マンガでは、古くは包丁人味平において、
こんなもん使うとは料理人の風上にもおけねえ!とか、良識あるまともな料理人が使うべきものではない、といった認識をされてます。
美味しんぼにおいては、
日本人の味覚を鈍感にするだの、食文化を崩壊させるだの、存在自体が悪というか、口にするのも汚らわしいような忌むべき扱いを受けています。
でも、化学調味料って、そんなに悪いものなんでしょうか?
化学調味料という名称は、いろいろと誤解を受けやすい呼び方です。
化学調味料は、さとうきびから精製されます。自然の食品から抽出したもので、食品添加物のように体に害を与えるわけではありません。
もちろん、化学調味料が万能なわけがない。昆布やかつおぶしからは、単純にグルタミン酸とイノシン酸だけでなく、その他様々なアミノ酸とミネラルを引き出せます。化学調味料だけで、その味と栄養成分はとうていでません。
ようは使い方次第なわけで、化学調味料はそういうもんで調味料の一種として、とらえておけばいいわけです。
化学調味料は、これまで家庭において、庶民向け食堂において、歴史的にある一定の役割を果してきました。これからも社会に貢献していくものだと思います。
ところで、化学調味料は現在、消費者の誤解を避けるため、うま味調味料と呼ばれているそうです。知ってましたか?
ボクは知りませんでした。次のサイトを参照して初めて知りました。

味の素株式会社HP http://www.ajinomoto.co.jp/index.html
内、コンテンツ「うま味基礎知識」 http://www.umamikyo.gr.jp/basic/index.html


そう。いままで、ボクがクソえらそーにくっちゃべってたウンチクは、すべてこのHPから仕入れた、にわか知識だったのです。えへん。文句あっか。

でも、ボクは思います。
料理マンガの世界においては、これからもあえて、「化学調味料」と呼ばれ、悪役を演じつづけてほしい、と。
そうです。これまで、「化学調味料」の存在は実社会で多大な貢献をして、そして料理マンガの世界では許しがたい悪役としてボクらを楽しませてくれました。
ボク達は、「うま味調味料」の価値を理解した上で、これからも悪しき「化学調味料」が料理マンガに彩りを添えてくれることを願います。



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